フォッシルとシチズンが提携した理由を考察する

ハイブリッドスマートウォッチ界で久々に大きなニュースが飛び込んできました。ハイブリッドスマートウォッチにおいて圧倒的な機種数で大きな存在感を示しているフォッシルがシチズンと業務提携すると発表したのです。でも今勢いに乗っているフォッシルが何故なのかという疑問が出てきます。今回はその意図を考えてみます。

提携の内容

最初にニュースの内容を振り返ります。

シチズンとFossil、拡大が予測される"ハイブリッドスマートウオッチ"分野で提携
シチズンとは米Fossil Group,Inc.は3日、スマートウオッチ分野での業務提携契約を締結したことを発表した。

二企業間で合意した内容は以下のとおり。

  • シチズンによるFossil社開発のスマートウオッチムーブメントの製造
  • シチズンによるムーブメントや完成時計の販売
  • スマートウオッチテクノロジーの共同開発

わかりやすく言うと、フォッシルは自社製品をシチズンの工場で製造すること、シチズンはフォッシルの技術を使って自社製品のハイブリッドスマートウォッチを発売すること、今後協力してハイブリッドスマートウォッチを開発していくことの3つに合意したということです。

フォッシルの意図

ではフォッシルはなぜ提携をしたのでしょうか。将来のハイブリッドスマートウォッチに着目するとその意味が見えてきます。

フォッシルグループの現在

ここ最近のフォッシルは、ディスプレイ付きのスマートウォッチに力を入れているように見えます。8月にはスカーゲンやエンポリオ・アルマーニなどから新しいスマートウォッチを売り出し始めました。一方でハイブリッドスマートウォッチの新作は新しくフォッシルグループに入ったトリー・バーチの製品ぐらいです。

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ここで考えられるのは、フォッシルはハイブリッドスマートウォッチの次の一手を定められていないのではということです。フォッシルグループのハイブリッドスマートウォッチは、最初のモデルと現在のモデルを比較すると駆動時間は増えたものの、機能やサイズなど大きな変化はありません。そろそろ刷新した機種を考えたい時期なのではないでしょうか。

フォッシル製品が売れ続けるために必要なこと

ここで、現在のフォッシルグループのハイブリッドスマートウォッチの将来の姿を勝手に予想してみます。

一つは高機能化です。機能についてはスマートウォッチを出しているため、ノウハウはあるはずです。しかし高機能化をすると、電池持ちという最大の障壁が待ち構えています。そこで、なんとか電池持ちを良くする方法を考えなければいけません。

二つ目は小型化です。フォッシルグループ以外でも多くのハイブリッドスマートウォッチに当てはまる問題ですが、厚みが課題として残っています。特にフォッシルグループの製品は、全体的に人がでかいアメリカ製なので仕方ないところもあるとは思いますが、大きすぎるとのレビューがたまに見られます。

三つ目は価格です。日本では発売されていませんが、レノボやシャオミは5,000円以下のハイブリッドスマートウォッチを発売しています。フォッシルグループの製品は定価2万円以上するものが多いため、対抗するためには抜本的なコスト対策が必要です。

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そこで目をつけたのがシチズンです。シチズンは「エコ・ドライブ」という光発電のみで動く時計をなんと1976年から売り出しています。さらにパワーセーブの技術もあり、暗闇で発電しないでも半年以上の駆動が可能となっています。さらに薄型の技術も先端を走っています。2017年に発表した「エコ・ドライブ ワン」は厚みがなんと2.98ミリ! その技術の高さが伺えます。そして安い製品も出しているので、コストダウンのノウハウも豊富なはずです。

Citizen Eco-Drive One

出典:Eco-Drive One

これらより、フォッシルはハイブリッドスマートウォッチの次の一手として必要な電池持ち、小型化、低価格に必要な技術を持っている企業としてシチズンに目をつけたのではないでしょうか。

シチズンの意図

シチズンはなぜフォッシルと提携したのか。現在のシチズンのハイブリッドスマートウォッチ製品を眺めていると答えが見えてきます。

シチズンのハイブリッドスマートウォッチの現状

精力的にハイブリッドスマートウォッチを売り出しているフォッシル。一方シチズンは、現在ハイブリッドスマートウォッチを意欲的には売り出していません。ハイブリッドスマートウォッチに属する製品として「エコ・ドライブ Bluetooth」を出してはいますが、アクティビティトラッキングは搭載されておらず機能を絞ったものとなっています。また価格も定価8万円と高価です。

ハイブリッドスマートウォッチを出している傘下の企業としてはアルピナがあります。アルピナは「オロロジカル」「あるパイナー X」といったハイブリッドスマートウォッチを発売しています。しかし、アルピナの技術はスイスの「MMT」という企業のものが使われているため、シチズンの技術ではありません。また提携企業としては「リズム時計」が「Cenno Connected」を出していますが、機能はシンプルであまり革新的な技術は使っていなさそうです。

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ハイブリッドスマートウォッチ市場に参入する最適なきっかけ

ハイブリッドスマートウォッチは今後発展する分野として期待され始めています。そこで、時計業界3割のシチズンが静観しているわけにはいかず、何か機会を探していたのではないでしょうか。

そこで来たのがフォッシルとの協力です。提携により、フォッシルの技術を使い比較的短期間でハイブリッドスマートウォッチを開発することができるようになったというわけです。さらに、継続的に協力してシチズンの技術とフォッシルのノウハウが詰まった新製品を作ることにより、市場での覇権を狙うことができるようになります。

まとめ

フォッシルとシチズンが連携することにより、互いに大きな相乗効果が期待できます。なによりハイブリッドスマートウォッチで恐らく販売数一番のフォッシルグループと、日本有数の時計メーカーが組むことで市場が活気づくのは確実です。次に二社がどのような新しい新製品を見せてくれるのか、大いに期待です。

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